2005/06/02

我が背子

2005-06-02-木 あぁ、叶わない幸せ...●●●の迷う道

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続日本紀』が到着したのを判って、授業結束後図書館へ行っていました。
実は最初が『続日本紀』を見つからない為、余計な時間が掛かったのです。
なんか、指定の処と一棚違って、最後はやっと見つけた。
そして、面白いものが発見!

『万葉短歌の漢訳と研究
作者は、ウチの学校の日本語先生だったらしい。今は離職しましたけど。
ところで、万葉集にある短歌を漢訳するもので、十三年間掛かったという。
以下は、その一部を転載して置きます。
001.狩獵(1:4)
宇智坡前聖主騎 精英侍駕踏晨曦
風光浩瀚青紗帳 萬馬奔騰逐鹿麋
 玉きはる宇智の大野に馬並めて朝踏ますらむその草深野

002啟航令(1:8)
熟田夜幕罩航津 浩浩艨艟泊海濱
玉兔東升潮水漲 一聲號角奮軍心
 熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎてな


003落照(1:15)
海神振筆寫蒼天 遍灑霞光照萬川
粲麗彩雲如夢境 與誰今夜共嬋娟
 綿津見の豊旗雲に入日さし今宵の月夜きよく照りこそ

004紫野行(1:20)
今隨紫野禁園巡 又見多情夢裡人
戍衛森森看守眾 小心揮手眼傳神
 茜さす紫野ゆき標野ゆき野守は見ずや君が袖ふる

005悲情(1:21)
嫣紅紫草散天香 徹骨相思尚未忘
嫁作人妻何怨恨 深情似海我心藏
 紫のにほへる妹を憎くあらば人妻故に吾恋ひめやも

006水中岩(1:22)
枕流石磊面如晶 不讓萍苔短暫停
公主冰心潔玉體 願能蘭蕙永芳馨
 河の上のゆつ磐群に草むさず常にもがもな常処女にて

007春去也(1:28)
喣喣和風拂柳腰 香山遠處素衣飄
綠肥紅痩春歸去 乍見新荷出水
 春過ぎて夏来るらし白布の衣乾したり天の香具山

008志賀湖(1:31)
志賀湖濱草木青 大灣淀滯水含情
繁華景色遷他邑 難覓宮人結伴行
 楽浪の志賀の大曲淀むとも昔の人にまたも逢はめやも

009黎明(1:48)
東方破曉現光華 冉冉晨曦織彩霞
回首欲尋千里月 悠悠不迫漸西遐
 東の野に炎の立つ見えて反り見すれば月かたぶきぬ

010懷古都(1:51)
采女穿梭過畫堂 輕飄衣袖散芳香
皇都遠徙佳人香 明日香風照舊忙
 媛女の袖吹き反す明日香風都を遠みいたづらに吹く


011孤舟(1:58)
安禮揚帆闖逆流 茫茫滄海有孤舟
島灣水路多艱險 夜半更深何處留
 いづくにか船泊てすらむ安禮の崎榜ぎ廻たみ行きし棚無小舟

012遙念(1:64)
荻蘆吐絮朔風寒 鴨鳥披霜感羽單
待駕難波思故苑 大和萬里欲歸難
 葦辺ゆく鴨の羽交に霜降りて寒き夕へは大和し思ほゆ

013落寞(1:82)
荒山曠野雨瀟瀟 颯颯秋風壯志遙
欲抑憂愁籌更切 任由斜落水珠飄
 うらさぶる心さまねし久かたの天のしぐれの流らふ見れば

014相思(2:88)
風吹稻浪似金黄 霧漫禾田情意長
往日綺情難再見 無邊愛戀幾時忘
 秋の田の穂の上に霧らふ朝霞いづへの方に我が恋やまむ

015訣別(2:105)
弟赴大和潛送行 三更細語瞬黎明
清涼曉露和酸涙 湿透青杉盡是情
 我が背子を大和へ遣るとさ夜更けて暁露に吾が立ち濡れし

016佇候(2:107)
午夜深山候妹臨 水滴湿透我衣襟
秋神有意傳衷曲 怎奈人兒無處尋
 足引の山のしづくに妹待つと吾が立ち濡れぬ山のしづくに

017離情(2:133)
篁葉菁菁布滿山 微風颯颯串其間
彎彎曲徑通幽境 萬里迢迢念佼顏
 小竹が葉はみ山もさやに乱れども吾は妹思ふ別れ来ぬれば

018松枝願(2:141)
途經岩代海灘邊 手繋松枝許願籤
鴉鵲啼聲何切切 安還與否靠蒼天
 磐代の浜松が枝を引き結びま幸くあらばまた還り見む

019壽比南山(2:147)
仰望無垠碧海天 昇平寰宇慶豐年
神大統蒼穹佑 壽比南山永世延
 天の原振り放け見れば大王の御寿は長く天足らしたり

020黄泉路(2:158)
路旁怒放棣堂花 暗澹幽園屬汝家
欲飲黃泉知命水 陰思路陌憾無涯
 山吹の立ち茂みたる山清水汲みに行かめど道の知らなく
呉素珠『万葉短歌の漢訳と研究

ところで、「我が背子」を「弟」として解釈するのは特例だと思います。
古来、日本には「いもせ」という話があります。その意味は「兄妹」。
「いも」は「妹」だと言うまでもないが、「せ」は「背」の意味があって引申して「兄」の意味になる。
そして、「妹背」こと「兄妹」の意味以外、「夫婦」とか「恋人同士」の意味として良く用いられます。
古事記』『日本書紀』『万葉集』からみると、神代から日本古代史世界には、
妻が夫のことを「兄」と、夫が妻のことを「妹」と呼ぶのはごく普通なことでした。

そのため、『日本書紀仁賢天皇紀には、「於母亦兄,於吾亦兄!弱草吾夫可怜矣!*1」という可哀想な話もあります。

でも、この「我が背子」は間違いなく「弟」の意味です。
それは、大伯皇女が大津皇子と別れ事を偲ぶ時が作った歌なのです。

話が遠くなるですが、持統天皇の頃、この大津皇子は謀反し、賜死されたのです。
日本書紀』では、以下の哀しくて切ない話があった。
 冬十月、戊辰朔己巳、皇子-大津謀反發覺。
 逮捕皇子-大津、并捕為皇子-大津所詿誤直廣肆-八口朝臣-香橿・小山下-壹伎連-博德、與大舍人-中臣朝臣-臣麻呂・巨勢朝臣-多益須・新羅沙門-行心及帳内-礪杵道作等、三十餘人。
 庚午、賜死皇子-大津於譯語田舍。時年二十四。
 妃皇女-山邊被髮徒跣、奔赴殉焉。見者皆歔欷。*2

また、『懐風藻』でも、大津皇子の小伝がある。
 皇子者、淨御原帝之長子也。状貌魁梧、器宇峻遠。幼年好學、博覽而能屬文。及壯愛武、多力而能撃劍。
 性頗放蕩、不拘法度。降節禮士、由是人多附託。
 時有新羅僧-行心、解天文卜筮。詔皇子曰:「太子骨法、不是人臣之相。以此久在下位、恐不全身!」因進逆謀迷此詿誤、遂圖不軌。*3
 鳴呼惜哉!蘊彼良才、不以忠孝保身、近此奸豎、卒以戮辱自終。古人慎交遊之意、因以深哉。時年二十四。
どうか、亡くなったは非常惜しいだと思われる有能、しかも皆に愛された方でした。

また、大津皇子が死を被はりし時、和歌・漢詩を各一首作って逝った。
大津皇子の被死はえたまへる時、磐余の池の陂にて流涕みよみませる御歌一首

ももづたふ磐余の池に鳴く鴨を今日のみ見てや雲隠りなむ
五言「臨終一絶」

 金烏臨西舍 鼓聲催短命 泉路無賓主 此夕誰家向
少なくとも、間もなく臨終の状態で、普通人ならパニックに成ったに違いない、漢詩まで作られるとは、
まさに曹植ほどの大物、中国人顔負けの方で亡くなったのは本当に残念だと思います。


以下、余談。
あと、この本は短歌だけあるから首卷の雄略天皇の御製歌*4が收録していない。
また、図書館新大系の外殻が要らないからお土産として持ち帰りました。


[]KagayaKyoさんの野望 KagayaKyoさんの野望を含むブックマーク KagayaKyoさんの野望のブックマークコメント 編集CommentsAdd Star

http://blog.xuite.net/kagaya.kyo/blog/313148/
>從我擅長的『美少女、萌系』這個領域,提高整體 ACG 在台灣的位階
(私の専門である「美少女萌え」から、台湾におけるアニメコミックゲームの地位を高めるんだ!)
>先求商業利益的擴大;至少跟流行歌曲、偶像劇之流有同等規模
(先ずは商業利益の拡がる、少なくとも流行ソング、アイドルドラマようなスケールを目指す)
>其後再進一步追求人文内涵、藝術價值上的提升
(そして、さらに人文の意味芸術価値の提升)
>讓 ACG 不再是『玩物』!不再是次文化!」
アニメコミックゲームを唯の『玩物』でなければ、『サブカルチャー』でもなくなれ!)
一言:無理。特に「美少女萌え」を発足点としてのは人に見下ろされるばっかりかも...

あと、今日は今野緒雪氏の誕生日だった。


*1:おもにもせあれにもせ、あがつまはや。=母にも兄、吾にも兄、弱草(夫婦)あがつまはや=私の母にとって兄(せ)であり、私にとっても夫(せ)である、優しい我が夫は、ああ遠くへ行ってしまった。ひとりこと倶楽部私本日本書紀参照。
*2大津皇子妃・山邊皇女、髮を被り徒跣して奔り、從つて殉死し、それを見る人には歔欷しない者がおらん。
*3:皇子容止墻岸、音辞俊明、長ずるに及びて才学あり。尤も文筆を好み、詩賦の盛なること皇子より興つたと言ふ。また幼年学を好み、文を能くし、壮に及んで武を愛し、能く剣を撃つた。時に新羅僧行心、天文卜筮を解し、皇子に語つて曰く、太子の骨法人臣の相にあらず、然るに久しく下位にあり。恐らくは身を全うせじと。因りて逆謀を進めたと言ふ。
*4:それをナンパ歌といふ人も居た。
トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/kuonkizuna/20050602

2005-06-01-水 卵は割ってみなければ、その中に何が入っているのか判らないものだ

[]灰羽連盟 灰羽連盟を含むブックマーク 灰羽連盟のブックマークコメント 編集CommentsAdd Star

先、サークル灰羽連盟の半分を観た。
良く出来ている、安倍吉俊氏も脚本をしてるし。第六、第七話は特にいい感じ。
あと、礫さんかわいいよ礫さん。(またかよ!)


豊受皇太神宮御鎮座本紀
 御間城入彦五十瓊殖天皇.崇神.卅九年壬戌,天照太神遷幸但波吉佐宮.
 今歳止由氣之皇太神結幽契,天降居.于時,大御食津臣命・建御倉命.中臣祖也・屋船命.草木名.今座度會郡,號-清野井庭神社・宇賀之御魂稻女神.今號-小俣神社・宇須乃女神..五戻霊.號-宇須野社也・須麻留賣神.今號-須麻留賣社是也・宇賀乃大土御祖神.素盞鳴尊子也.度會山田原地護神・若雷神今世號-北御門大明神是也.・彦國見賀岐建與束命.號-度相國見神社・天日起命.伊勢大神主祖神也・振魂命.玉串大内人祖.相從,以戻止矣.爾時天照皇太神與止由氣皇太神,合明其德居焉.如天上之儀,一處雙座焉.
 和九産巣日神子-豊宇賀能賣命,屋船稻霊神也.生五穀,而善釀酒,奉御饗.御炊神-冰沼道祖,素盞鳴尊孫也.亦號-粟御子神.今世號-御炊物忌,其縁也.率四九-三十六竈神而,朝大御氣、夕大御氣炊備,奉御饗.丹波道主貴,大日天皇開化之子,彦坐王子也.今世浩大物忌子,其縁也.為御杖代志天して,品物備貯之百机而奉神嘗焉.諸神所作祭神之物,五穀既成,百姓饒矣.其功已辭竟,天照太神伊勢向幸給.止由氣太神復昇高天原,日之小宮座.于時,以吾天津水影寶鏡,留居吉佐宮.天地開闢之際,雖萬物已備,而莫照於渾沌之元.因茲,萬物之化,若存若亡.而下下來來自不尊.于時,國常立尊所化神,汎刑於天津水影.以天御量事,真經津寶鏡三面鑄表,寔是自然之霊物,天地感應,當此特神明之道.而天文地理.以自存者也.故鏡為作神名,號-天鏡神尊,其縁也.即起樹天津神籬於魚井原.秘藏黃金樋代,道主貴八小童天日起命・豊宇賀能賣命,備御饌奉焉.于時,高貴大神敕宣:「以皇孫命霊,宜崇大阻止由氣皇太神前社.」云云.仍為向殿神作.霊形,鏡坐也.皇孫命,金鏡也.


[]メモっす メモっすを含むブックマーク メモっすのブックマークコメント 編集CommentsAdd Star

おたくの娘さん(すたひろBOX より、USO9000仮想工房経由)
http://www2.tokai.or.jp/studio-HiRo/index.htm
いやぁ、面白いですよ。特に色々友人に皮肉を言うネタが有ること。
例えば:
>あ、でも、もう四年生なのにこんなアニメに夢中だなんて可笑しいですよね?
>...全然←27歳
何より「黒だの!白だの!」中毒者のがいるから案外面白いって事です。
>最後の『おたく』の地位が随分低いですがあくまでも叶の価値観なので気にしないでね?
いや、むしろこの価値観は正しと思う。変態より高い事をましだと思います。

そう言えば、ぽてと日和。(ぽてギャラリー漫画Leaf
http://www4.famille.ne.jp/~mrpotato/
三十路千鶴ねえはプリティでキュアキュアだニャ。


紙きり1年戦争
http://thundergate.jp/chicago/daitouryou/kamikiri/images/

台湾大学図書館
http://tulips.ntu.edu.tw/search*cht/a?a
日本古典文学全集日本古典文学大系、国史大系、前賢故実、ましても日本巫女史まであるぜ...
それだけじゃない、日本書紀私記前賢故實ですって!
運があるなら、台湾六国史関連書籍を全部確認できるかも...

先、ウチが図書館お薦めました続日本紀が到着したことが確認した。お知らせくれなかったのですが...


このリンク元から着た人がいる
d.hatena.ne.jp/sakusakumarimo/edit?date=20050601
アクセスで遡ると、おとなり日記によってきたそうです。
日記を少々拝見すると、全然違う世界の住人だと感じられます。再び自分の変人度を認識する今のこの頃。

Keywordと言えば、確かに雄略天皇とか万葉集とかマニアックとかは此処で良く出る単語ですけれど、
今日はそのどっちもないはずだったのに...おとなり日記になった原因は、多分「伊勢」かも?


URAKI@外部URAKI@外部 2005/06/01 13:46 http://www.nkfust.edu.tw/~unit15/japanese/
USO9000USO9000 2005/06/01 21:37 こちらでは御無沙汰です。
「灰羽連盟」、良いですよね。私も「NOIR」の後、久しぶりにDVDを買い揃えた作品でした。暗示に満ちた丁寧な映像が良いと思います。

kuonkizunakuonkizuna 2005/06/01 21:51 ああ、原作は安倍吉俊氏の同人誌では比較的安倍節が薄い作品だと聞いた事がありますが、アニメの出来は案外にいいですね。
来週はサークルで後半を観るつもりです。残念のことで、今は代理されていないのようです。香港の海賊版が買う人を見たことがありますが...或る友人がRC-2(日本国内仕様)を買ったはずだと思いますので、後で彼に聞くかも...

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